□今回の公明党の得票数減少の原因も公明党岩盤支持母体の創価学会員の減少が大きい

 

2019年参議院選挙は「与党単独過半数確保」「安倍内閣国政選挙6連勝」という言葉が踊っているが、こと公明党に関して言えば、勝利どころか、この結果に衝撃を受けているのではないか。

公明党は2019年参議院選挙の比例区の得票数は653万票。議席数こそ7議席を確保しているが、1999年の自公連立以降の公明党の最高得票である、2005年の郵政解散の時の衆議院選挙における898万票と比較すると、245万票も減らしている。3年前の2016年参議院選挙の比例区得票数と比較しても104万票減少。2017年の衆議院選挙の比例区の得票と比較して43万票減少。これだけ得票数が減ったにも関わらず、公明党得票数大幅減が比例区で7議席を確保したのは、投票率が50%を割り込むほどの低投票率だったひとが大きい。全体の「水かさ」が下がったため、低得票でも議席が確保できた、というわけである。

今回の公明党の得票数653万票の中には、自民党との選挙協力による自民党票を加えた得票数である。自民党との選挙協力票を、2005年の郵政解散の時の衆議院選挙における公明党の最高得票数898万票と1999年の自公連立以前の公明党の最高得票である1998(平成10)年の参議院選挙における774万票との差である124万票とすると、今回の公明党の創価学会員による岩盤基礎票は、653万票から124万票を差し引いた529万票ということになる。

公明党の岩盤基礎票が500万票台まで落ち込むのは、言論問題で池田大作・創価学会が世間・マスコミからモーレツな批判を受けて、公明党が得票数、獲得議席とも減らした1971年の参議院選挙以来のこと。

こう言うと「いや、500万票台というのは、ないだろう。600万票台は確保しているはずだ」などと言う者が出てくるが、仮に今回の公明党の岩盤基礎票が600万票台だったとしても、600万票台は、リクルート事件、砂利船汚職事件、17000万円金庫事件、創価学会員による日蓮正宗寺院住職誘拐事件等で創価学会、公明党が批判された1989年の参議院選挙、日蓮正宗と創価学会の宗創戦争、創価学会破門で会員数を減らした1992年の参議院選挙以来である。

公明党が岩盤基礎票を600万票台に落ち込んだときは、この他に第1次宗創紛争で池田大作が創価学会会長、法華講総講頭を辞任した翌年1980年の参議院選挙がある。

これら1971年、1980年、1989年、1992年の選挙での、公明党岩盤基礎票の落ち込みの原因は、言論問題、第1次宗創紛争、第2次宗創紛争、創価学会の不祥事等による創価学会員の脱会、離反があった。では今回の場合はどうなのか。今回は、1回だけの公明党の岩盤基礎票が落ち込んだのではなく、2005年の郵政解散の時の衆議院選挙以来、公明党の岩盤基礎票が長期低落傾向にある、ということで分析しなければならない。今回の公明党の得票数減少の原因も、やはり岩盤支持母体の創価学会員の減少が大きいのではないか。

 

1962-2019公明党得票数
 

 

(1公明党国政選挙全国区・比例区得票数一覧)

 

 

 

□タダで読むことが出来るインターネット上の創価学会批判の言論を創価学会員が読むことを創価学会は制止できない

 

では2005年以降の創価学会員の長期低落・減少傾向は、なぜ起きているのか。

20105月の創価学会本部幹部会以降、池田大作が創価学会の第一線から退いていること、後継の最高幹部に池田大作ほどの求心力がないこと、2009年からつづく米軍基地辺野古移設問題、2014年の労働者派遣法改正、2015年の集団的自衛権容認の安保関連法、2016年の組織犯罪処罰法改正、さらに201411月の創価学会会則の教義条項変更の実質失敗、201611月、創価学会会則の一部改正により、「創価学会仏」の文言を追加したことが創価学会員から疑念を持たれたこと、そして2005年ころからインターネット上に「反創価学会」「アンチ創価学会」「創価学会批判」「公明党批判」を標榜するサイトが次々と現れて創価学会批判を展開していること等々により、創価学会員の離反、脱会がつづいている。

1970-1990年代の頃の創価学会批判の主力媒体は、週刊誌、マスコミだった。週刊誌、月刊誌、新聞は、書店や駅の売店でカネを支払って買って読まなくてはならないが、インターネット上のサイトの言論は、無料でありタダで読むことが出来る。したがって曾て創価学会は「週刊誌を読むな」と言って、創価学会員が週刊誌の創価学会批判記事を読むことを制止しようとしたが、今は「インターネットを見るな」と言っても、タダで読むことが出来るインターネット上の言論を創価学会員が読むことを制止できなくなっている。

この中で一番大きな要因は、池田大作が創価学会の第一線から退いたこと。後継の創価学会最高指導者になるはずの原田会長をはじめとする最高幹部に、池田大作に匹敵するほどの求心力がないことである。これにより現原田稔会長を中心とする創価学会執行部の指導性に疑問を持つ創価学会員が、「反創価学会」「アンチ創価学会」「創価学会批判」「公明党批判」を標榜するサイト等に共感して、創価学会員の離反がつづいている。

今回の2019年参議院選挙において、創価学会員の内部造反を象徴する出来事があった。それは、現役の沖縄創価学会壮年部員である野原善正氏が、公明党代表・山口那津男氏が公認候補になっている東京選挙区に立候補したことである。投票日前の下馬評では「山口代表の刺客」「今の公明党は潰すしかない」「武見敬三氏と第六位の当選圏入りをうかがう」等々、派手な文言が踊っていたが、いざ蓋を開けてみたら21万票で8位。山口那津男氏の81万票の四分の一の得票で終わった。山口氏の「刺客」にはなり得なかったようですね。

「アンチ日蓮正宗」「一般社団法人仏教宗学研究会」「国際カルト宗教対策委員会」が注目していたのは、野原善正氏に投票した21万票の中身である。どういうことかというと、創価学会脱会信者、創価学会離反信者が、野原善正氏に投票したかどうかである。

創価学会脱会信者、創価学会離反信者が、野原善正氏に投票していたら、それこそ得票数は21万票どころではない。もっと得票数は伸びているはず。法華講員や正信会信者、顕正会員もその大半が創価学会から脱会した信者だから、そういう人たちが野原善正氏に投票していたら、本当に野原善正氏は当選圏に入っているはずである。だから、私は、創価学会脱会信者、創価学会離反信者は野原善正氏に投票していないと思いますね。なぜなら、野原善正氏は創価学会批判はしているが、現役の創価学会員であり、創価学会はやめていない人である。創価学会を脱会した人は、いくら創価学会批判をしているとはいえ、現役の創価学会員に投票することに、抵抗を感じていると思う。だから、公明党の山口那津男代表が公認候補として立候補する選挙区に、刺客候補を立てるということは、試みとしては面白いと思いますが、その候補者が現役の創価学会員では、選挙に勝つのは難しいのではないか。たせから山口那津男氏の刺客としては、創価学会を脱会した人か、創価学会などの「日蓮正宗系」カルト団体以外の出自の人が適当であるように思われる。

 

2019参議院選挙・東京選挙区
 

(東京選挙区得票数・読売新聞より)